日経エンタテインメント・2007年6月号

ここ数ヶ月は立ち読みすらしなかったのだが、久々に興味ある内容があったので購入した。バッファロー吾郎のインタビューという箸休めも面白かったのだが、やはり一番の注目はアナウンサー特集における「スポーツアナ白書」である。特に、ごたごたがあって、看板アナに格上げせざる得ない状況になった平山健太郎&河村亮の日テレアナウンサーの座談会形式のインタビュー。そして、「日本サッカー実況の至宝」倉敷保雄のインタビューが非常に興味を持った。

(河村) (略)あと気をつけなきゃいけないのが、お茶の間との温度差。こっちは生放送で試合の現場にいるから、緊張している。でも、お茶の間はゴロンと転がってリラックスしてテレビ見ている人が多いんだよね。だから、例えばデータの羅列とかは非常に面白いんだけど、果たしてみなさんの頭の中に入るかな、聴いて心地いいかなって、フィルターには常にかけているよね。
(平健) メモをとりながらテレビを見る人はいないですもんね。だから、一回で伝わる紹介の仕方を考えていますよ。
(河村) 温度差を忘れて、力んで絶叫しても、お茶の間には伝わらないこともある。盛り上げたいと思って実況することはあっても、それが全てではないよね。例えば箱根駅伝の中継の時、走者の息遣いをマイクが拾っていたら、いくら実況で山越えの過酷さを熱く説明しても、その息遣いにはかなわないんです。そういったとき僕は黙ることを選択しますね。

日テレのアナウンサーは、自分の知り得た情報を詰め込みまくる、過度な絶叫は当たり前という概念が、「ごたごたを起こした張本人(苦笑)」の影響でこびりつきまくっているのだが、河村亮はそれとは一線を画した実況論を持っているなというのは意外であった。もっとも、河村亮の実況は、ワンフレーズを絶叫しているという印象が強いのだが...

倉敷保雄は全文引用してしまいそうなのだが(苦笑)

・アナウンサーになって10年経つまで実況できなかったことについて
倉敷) 最初に入ったラジオ局では、スポーツ中継が競馬中継しかなかったんです。でも、遠回りをして良かったと思ってます。ラジオ局では音楽番組のパーソナリティ兼ディレクター、次に就いた文化放送でジャ報道記者として記者クラブに通いました。そこで演出力と取材力を学べたんですね。(中略)演出力は、言葉の選択に役立つし、自分が思い描いたイメージの実況をするために欠かせません。取材力は実況中に紹介するデータやエピソードを集めるために欠かせません。報道記者を経験したことで、海外の新聞や雑誌の記事などの信ぴょう性も読み取れるようになったから収穫は大きいですよ
・CSと地上波の実況で心がけていることに違いはあるかという問いに
倉敷) スカパー!の視聴者はマニアの方が多いのですが、マニアにもいろいろなタイプがあるので、地上波とは違ったり絞りきれない区分けがあります。そこにどう対応すればいいのかという難しさはある。ただし、地上波よりも自由にできる部分もあります、「あの選手をスターにしたいから推してくれ」といって演出めいた要求はされたことありませんから(笑)
・サッカー人気が低迷している気もするのだがと言う問いに
倉敷) それは実際にあると思います。日本サッカーは、次の南アフリカ大会で失敗したら、大打撃を受けると思います。だから、放送局も目先の勝利ではなくファンを増やしていく必要性がある。決して離れていかないファンをつくって文化として定着させる。そんな草の根運動も実況アナの役目じゃないかと思います。

特に、最後の二つに関しては、倉敷保雄アイロニーな視点を垣間見せ、今のスポーツマスコミに対する問題点を倉敷保雄流に表現したように思えた。