2006年12月20日、訃報の特異日

青島幸男氏 享年74

おそらく、戦後の日本芸能マスコミの金字塔を建てた唯一無二の人物だと思う。そして、日本のバラエティの礎を気づいた功労者であろう。ただ、悲しいかなそれを受け継がせる、後継者教育というのはあまりうまくいかなかったのではないかと最近のTV業界を見ているとつくづく感じる。谷啓とのコンビでやっていた「主体性のない男」は、至極のコント作品であり、これをアレンジして展開していったのが、小松政夫伊東四朗であり、小松政夫タモリのユニット芸だと思っている。ある意味、小松政夫植木等青島幸男の遺伝子を引き継いだすごい人なのだなと思ったりしている。後は東京都知事に祭り上げられてしまったのが、晩節を汚してしまい、寂しい晩年を過ごしてしまったのようにも思える。まぁ、都市博中止ということをやっただけでも評価すべきなのだろうか。こと東京都知事という職業は、外見はトップダウンで権力を誇示できる独裁的な政治をしてしまっているように見えるのだが、その実はあまりにも東京という存在があまりにも大きすぎるが故に、実際は何も動かすことが出来ず、役人におんぶにだっこ状態にならざる得ないと言うのを、さらけ出したというのもある意味青島幸男がやった功績だと思う。石原慎太郎だって居丈高に振る舞って、権力を誇示しているように見えるのだが、実際のところ本人がトップダウンで都政を動かしているとは思えない。結局のところ、役人がうまく掌の中でやんちゃ坊主を遊ばせているに過ぎないのである。是非とも、小林信彦の2006年最後の「本音を申せば」*1では同じ時代にTVを創った人間から見た青島幸男の虚実、私たちの世代が抱いているイメージとは違う青島幸男の本性というのを紹介して欲しいものである。

テレビの黄金時代 (文春文庫)

テレビの黄金時代 (文春文庫)

↑の本は、青島幸男を含めたTV史をうまくまとめた作品で、いかにも小林信彦的な作品である。

岸田今日子氏 享年76

まず驚いたのが、青島幸男より年齢が上だったということである。吉行和子や富士眞奈美の「リアル三婆」トリオはほぼ同じ年齢で60代後半という印象があったのだが、実際は岸田今日子はほかの二人よりかなり年齢が上だったと言うことである*2。たぶん、40代の人は傷だらけの天使で「おさむちゃん」と震えた声でささやきかけるショーケン水谷豊を雇っている謎の女の印象がムーミン以上に強烈であろう。石橋貴明の「保母尾田保母男」シリーズにおける岸田今日子のキャラクターも「傷だらけの天使」のど真ん中世代である、石橋貴明ならではのオマージュであり、リスペクトだったように思える。後は「大奥」のナレーションもインパクトがあったし、彼女の朗読の説得力というのは昨今のアナウンサーの朗読劇やカタリストと自称している人と比べたら正に月とすっぽんと言えるほどの優れたものであった。

カンニング・中島忠幸氏 享年35

色々な意味で一番衝撃的なのがこの訃報であった。まず、自分より年下の人が病気でなくなると言う寂寥感が一番最初に感じてしまった。そして、カンニング竹山隆範がピンで活躍しているのを暖かく見つめて「もう俺がなだめなくても、仲間がちゃんとフォローしてくれるから安心だ」と思いながら永眠したようにも思えてならない。ただ、ここで、芸能リポーター陣、特に武藤まき子は手ぐすね引いて、竹山隆範を泣かしてやろうとインタビューしようと待ち望んでいる状態だと思うと、芸能マスコミの浅薄さを浮き彫りにしてしまうように思えてならない。「大事な相方の死について、みなさんに語れるほど度胸が据わっていない男です。一生引きこもって泣きたいくらいだ」としばらく表に出ないで、マスコミの報道が落ち着いてから、いつもの竹山隆範として復活して欲しいくらいである。

明日のスポーツ紙は、相次ぐ訃報をトップにするか、亀田興毅の勝つことだけに拘った、カテナチオの一般受けしないタイトルマッチをトップにするか見物である。まぁ、後者の方になるであろうが

*1:週刊文春に連載中のコラム

*2:吉行和子:1935年生まれの71歳 富士眞奈美:1938年生まれの68歳