FNS27時間TV2012 キーワードは「ズレ」と「集大成」

久々に放送前からドキドキしているし、ワクワクもしている。実のところ、これほど楽しみにしているというか期待しているFNS27時間TVは、ワンハンドレッドナインティナイン中居正広)一発目の「楽しくなければテレビじゃないじゃん」の2004年以来である。ともかく、タモリがメインを務めるという第一報を聞いたときには正直言って驚いた。「いやー、この時間が一番眠いんだよね(笑)」のお約束ネタがガチで聞けることにワクワクしたし、タモさんなにとち狂ったの?と心配したくらいである。
ただ、概要が見えだした段階で、「あれっ?」と首をかしげてしまう内容、そして、一部増すコミュニケーションで言われているいわゆる「Xデー」報道、ちょっと当初期待していたのとは違う方向になりつつあると懸念したりもした。ただ、今売りのTV雑誌で公表されたタイムスケジュールを見て、これは、良い意味でも悪い意味でも、今年のFNS27時間TVは目が離せないなと再認識した。そんな中で私の中で浮かび上がったキーワードが「ズレ」と「集大成」という言葉である。

4つの「ズレ」

テーマが「団結」というズレ

はっきり言って、タモリの芸風やスタイルに余りにも不釣り合いな「団結」という言葉。しかも、集合写真で良いともレギュラー陣と一緒に揃いの「団結」Tシャツ・団Tを着ているタモリの姿を見て、正直言って戸惑いを感じてしまった。ただ、逆にこれこそがタモリの本来のタレントとしてのスタイルなのではとも思ったりしている。もし、明石家さんまビートたけし北野武)だったら、「団結」というテーマを聞いただけで拒否反応を露骨に示すだろうし、こんなのに付き合ってられるか!と足蹴にするだろう。ただ、タモリの場合、「そっちが決めたテーマだから...ま、付き合ってやるよ」と乗り気ではないながら参加はするが、実際に関してはつかず離れず、自分は気ままに乗ったり乗らなかったりして過ごしながら展開する。そんな感じがしてきている。最も「やる気のある奴は去れ!」という名言を残したタモリである。一生懸命団結を誇示しようとがっつくいいともレギュラー陣には、かなりきつい冗談やカウンターギャグを食らわすことであろう。そちらの意味でも注目である。

草�亟剛の100kmマラソンというズレ

そもそも、草�亟剛という存在そのものが「ズレ」の象徴といってもいい。番宣特番「○○でいいのに」シリーズにおける自由人なふるまい、木村拓哉からして「ずっと付き合ってて、剛って何者?っていまだにわかんない」と言わせる存在。それでいて俳優としてなんか知らないけど存在感を出す演技、もちろんバラエティにおけるノープランぶりや突拍子もない展開も含めて、タモリ級な謎の男草�亟剛のマラソン挑戦。なんと言っても尊敬するタモリの恩返しと称して100kmマラソンに挑戦という言語明瞭意味不明な挑戦理由、しかも「タモさんの(いいとも開始から)30年に比べれば100kmなんて軽いですよ」という妙な自信、しかも高橋尚子有森裕子といった有名ランナーとのトレーニングに「あの」草�亟ワールドでこなす。本当にこのマラソン、キラーコンテンツでジョーカー的コーナーになりそうである。普通におきまりの展開で終了間際にゴールし感動の展開になるかもしれないし、途中でいきなり「タモさん、やっぱ100kmは厳しいっすね」と笑顔でリタイアしてひんしゅくを買うことも考えられる。いきなり早くついて「楽勝っすね」とけろりとした表情でビストロSMAPに出てくることすら考えられる。ある意味ポストタモリって草�亟剛なのかもしれないと思わせる企画なのかもしれない。

早朝に「ずっと起きていた朝は」を放送するというズレ

タイムスケジュールで一番「はぁっ?!」と声を上げてしまったのがこれである。ここ数年はF1中継をするという慣例だったのだが、そこの枠になんとも微妙な番組を、しかもタモリ森尾由美松居直美磯野貴理子と喋るのかどうかも分からない展開、深夜の乱痴気騒ぎ枠の後に、毎週恒例のアラフォー女子3人によるまったりトークという激しい温度差、アラフォー女子3人が一番このオファーをされて戸惑っていると思う。ここでの30分はある意味興味津々である。

共演しなさそうな芸人・タレントのズレ

真っ先に気になったのは田村淳である。たしかに情報番組枠ではめざましテレビ以外は全く絡まないので知りたがりレギュラーの田村淳は出なくても不思議ではないのだが、正直言ってすごい政治的なきな臭さを感じてしまう。実は、出なさそうなので言うと雨上がり決死隊は有吉広行といったいわゆる「加地組」テレ朝バラエティの中枢がこれに絡まなさそうなのが、ある意味今のバラエティ番組におけるパワーバランスの象徴ともと思ってしまう(有吉はとんねるず枠で出演する可能性はあるかも)。なんかテレ朝も久々に24時間以上のテレソンをやるという噂もあるくらいだし、田村淳は来年のFNSのMCを務める可能性もあるとYO-SO-Uしている。そういった意味では深夜枠のテレ東「ざっくりハイボール」「ゴットタン」との戦いも気にはなる。ちなみにビートたけし火薬田ドンさんで深夜に暴れまくるだろうから、それは別な意味で期待している。ちなみに、東野幸治は早々に不参加表明をツイッター上でしており、自分のポジショニングをわかってらっしゃると爆笑してしまった。

3つの「集大成」

芸人・タレント「タモリ」としての集大成

おそらく「笑っていいとも」という番組が分水嶺になり、それ以前のタモリとそれ以降のタモリとのイメージは大きく違うであろう。そして、いわゆる密室芸とかイグアナ、アイパッチ姿や中津産業大学教授といった変人キャラを知らない世代が大半とも思われる。そんな中で「オレたちが大好きで格好良かったあの頃のタモリ」を見せる可能性が今回はあると期待している。とりわけ、最初の2つ「とんねるずのみなさんのおかげでした」と「ホンマでっか?!TV」で、それを見せる可能性が高いと思う。石橋貴明が「タモさーん!そこはイグアナやらないと!」とか「そこの謎の中国人!うるさいよ!」とどんどんぶっ込んでいき、木梨憲武がなんちゃって中国語やなんちゃって音楽ギャグをかまし、そういったノリが嫌いではないタモリもガンガン攻めていき「オレも歳とったから、無理だよ(苦笑)」といいながら、往年の密室芸を展開するタモリを想像してしまう。そんなタモリを引き気味に見てしまう若手いいともレギュラー陣、そして、タモリ以上に今までの似てねぇモノマネをかぶせていきそうな関根勤、色々とイマジネーションが湧き上がる。そして、「ホンマでっか」で期待するのはアカデミックなタモリ。昔は筒井康隆寺山修司山下洋輔栗本慎一郎等といった作家やアーティスト大学教授とも付き合いのあったタモリ、そこで見せたアカデミズムの衰亡を冷めた目でそれでいて理知的に分析していたある種の分析芸のパイオニアとも言えるタモリ。当然、ホンマでっか評論家陣とのバトルとは行かないまでも、今までとは経路の違う評論家陣へのツッコミや質問をぶつけるのに期待している。特に武田邦彦池田清彦にどういったポイントでタモリがカマしてくるのか。トリビアの泉の評議委員長やタモリ倶楽部ブラタモリとはちがうエッジの効いたタモリを見てみたい気がする。

「笑っていいとも」の集大成

今年のFNS27時間TVで一番期待し、一番楽しみにしているのが「アカン警察」でやるであろう「笑っていいとも」事件史である。おそらく、今のいいともしか知らない人にとって、初期のいいとものパンキッシュでアバンギャルドなコーナーの内容と数々の伝説や騒動を巻き起こしたテレフォンショッキングを見たら、唖然とするかもしれない。ただ、素人参加企画が多いのと個人情報保護の観点からお蔵入りになるのがかなり多いと思うのだが...とりあえず、予習として今売りのEX大衆におけるタモリ特集は是非とも読んで欲しい。
まずはテレフォンショッキングで見たいのは
内田裕也から長谷川和彦という83年→84年の年またぎ、友達の輪
明石家さんま初登場における当時から凄かったトーク怪獣ぶりとタモリの悪口ネタのターゲット小田和正への友達の輪
・翌日の小田和正タモリのガチンコ「テレフォンショッキング」(「何でもいいから聞いてよ、ちゃんと答えるから」という小田和正の凄いきつい一言が強烈)
有吉佐和子タモリ貶しプレイ炸裂の毒舌説教と無茶ぶりなギャグ要求、そこに乱入してきたものの、有吉佐和子に足蹴にされ撃沈させられたレギュラー成り立ての明石家さんま
片岡鶴太郎小森和子に電話し本人のモノマネをしたら「ふざけるのもいい加減にして!」と怒られ切られてしまう。その後普通に電話し直したら「さっき、私のモノマネをしたいたずら電話があったのよ。困るわ」と言われタモリと鶴太郎が困惑してしまった
・バブルガムブラザースがテレパシーでラップをし、最後になったら観客と一緒に「輪!」と叫ぼうというゲームまがいのことをやったら、客とバブルがドンピシャ「輪!」と重なり、大盛り上がりした瞬間
・(100%無理だろうが)佳山明生が出演するはずなのに、一般素人がタモリの隣に座り、タモリが「何か?」と問いかけ何かを喋ろうとした瞬間スタッフに取り押さえられながら「喋らせてくれ!喋らせてくれ!」と叫ぶ素人。この後のコーナーでもこれをギャグとしたタモリも凄かった。
これ以外にも上げたらきりがない。
そして、見たいコーナーとしては
・エアロびっくり珍体操(素人が考えたオリジナルな体操を審査。審査員の大屋政子たこ八郎の存在感だけでも強烈)
・五つの焦点(フォーカス)(当時発刊されたばかりのFOCUSの記事をネタにしたタモリ田中康夫山本コウタローによるなんちゃって時事放談。三人の脈略のない話しぶりとエキサイティングぶりが強力)
・私のメロディ(当時のヒット曲や童謡や流行歌を課題曲にして、替え歌や今のマキタスポーツ的な○○風サウンドでアレンジする。中村泰士の真剣だけどユーモアを忘れない審査と、例題を披露する当時のいいとも青年隊のレベルの低い内容、参加者の意外なまでのクオリティの高さは印象深い)
・日本一のサイテー男(ある種、テレビ番組におけるフリートークのパイオニアとも言える。当時は珍発明コンテストの応募が少なかったため、時間つぶしにタモリ明石家さんまが雑談していたのがきっかけというのも、ミラクルであった)
・くるなら来い!(いわゆる奇人変人大集合コーナー。このコーナーで関根勤と一緒にMCを務めたダウンタウンは、ある意味これがきっかけで普通に仕切りとか出来るんだなと認知されたと言っても過言ではない。関根勤の素人転がし、ダウンタウン転がしも秀逸だし、関根勤のスタイルを盗みながら浜田雅功のMC能力がぐんぐん伸びた姿も印象深い)
後は、月亭八方がレギュラーで当時はいいようにタモリたちに弄られていたように見えたが、実は八方が借金返済のためやっつけ仕事で東京に来ていたため、本当に早く終わりたかったという噂があったり、古舘伊知郎が木曜いいともの顔だったり、ウッチャンナンチャン野沢直子の夢逢え組、清水ミチコの物真似芸の凄さ、実は一番最初の物真似コーナーは井手博士(現井手らっきょ)でそのレパートリーの多さとたたみ込み方が圧巻だったとか、枚挙にいとまがない。
ともかく、これだけでも27時間やって欲しいくらいである。

「楽しくなければテレビじゃない」フジテレビ流バラエティの「集大成」

これは、2004年のワンハンドレッド以降の継続したテーマだと思うのだが、今年に関して言えば、はっきり言って、本当のエンディングと言われている「笑っていいとも」終了もしくはタモリ降板を含めた大幅リニューアルの告知がどういったかたちで流されるのか、もしくは何も流されずに普通に大縄飛びクリアと草�亟のマラソンゴールで周りは感極まっているのに、何食わぬ飄々とした感じでタモリが「とりあえず、明日のいいとも、見てくれるかな?」といい出演者とスタッフが「いいとも!」と叫んで終わるという事も考えられる。いわゆる「楽しくなければテレビじゃない」の象徴としていまだに残っている笑っていいともをフューチャーしたことで、ある意味80年代以降の牽引車だったフジテレビのバラエティ番組は一つの幕を下ろすのは間違いないと思う。後、幕引きをするとしたら、萩本欽一ビートたけしになるだろうし、波8組やピカルの定理はさすがにこの舞台は大きすぎるであろう。そういった意味で来年から2〜3年は情報番組サイドがメインになるように思う。それこそ田村淳がメインになるかもしれないし、そこにめざましテレビ、とくダネ組が絡むような気がしてならない。

なんだかんだ言って、FNS27時間TV、オープニングから目が離せない。